建設DXが進まない理由とは?5年間の実態調査から見えた人手不足・BIM活用の課題と解決策

皆さんこんにちは!FDDI事務局です!

2024年規制や2025年問題により建設業界の人手不足が深刻化する中、なぜデジタル化やBIM活用は進まないのか。BuildApp総合研究所の最新実態調査レポートから、ゼネコン・サブコンの構造的課題と打開策をわかりやすく解説します。

要約

  • アナログ商習慣の停滞:依然として現場では紙や口頭のやり取りが多く、デジタル化が一部工程に留まる実態。

  • 立場・規模による格差:元請けの管理データと専門工事会社の施工状況にズレがあり全体最適が阻害。

  • 工期のしわ寄せと解決策:後工程への負担集中を、BIM活用やフロントローディング等で解消する提言。

建設業界を襲う「2024年規制」と「2025年問題」のリアル

建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制(年360時間〜最大960時間)が本格適用されました。これに加え、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、熟練技能者が大量に退職する「2025年問題」が重なったことで、現場の人手不足と高齢化は危機的な局面を迎えています。

BuildApp総合研究所(東京都新宿区、代表:山梶真司氏)が2026年7月1日に公開した「建設DX実態調査レポート2026」(2021年〜2025年の定点調査を再構成)によると、多くの現場がデジタル化による省人化・効率化を模索しているものの、依然として「紙の図面」や「口頭・電話でのやり取り」といったアナログな商習慣から脱却できていない実態が浮き彫りになりました。

ゼネコン・サブコンの「立場」と「企業規模」で異なるDXの足枷

デジタル化が進まない背景には、発注者、元請け(ゼネコン)、一次・二次下請け(サブコン・専門工事会社)それぞれの立場や企業規模による「デジタル格差」と「課題の不一致」が存在します。

元請けと下請けにおける「データの乖離」

現場では、急な設計変更や工程のズレに対して、職人や職長同士が現場対応(直接の口頭調整)で解決するケースが多発しています。その結果、元請けが管理画面上で見ている「記録データ」と、サブコンが動いている「実際の施工状況」との間に大きなズレが生じ、二重管理や手戻りが発生する要因となっています。

全体最適の押し付けと現場の疲弊

大規模な総合建設会社(大手ゼネコン)が導入する一元管理システムやBIMツールは、施工管理業務全体の効率化(全体最適)を目指しています。しかし、リソースの限られた専門工事会社にとっては、システムへの入力負荷や操作習得のコストだけが増加し、自社の部分最適な効率化に直結しないという構造的なつまずきが生じています。

専門工事会社へ集中する「工期しわ寄せ」の構造

人手不足や情報連携の不備によって前工程が遅れた場合、そのしわ寄せはすべて後工程を担うサブコン(内装、電気、空調、配管など)へ向かいます。

これまでは、後工程の遅れを「現場の残業や休日出勤」という労働力でカバーしていましたが、時間外労働の厳格化により、物理的に突貫工事を行うことが不可能になりました。結果として、適正な工期が確保されないまま規制だけが適用され、現場の疲弊と工期遅延が常態化するリスクが高まっています。

課題解決の鍵:フロントローディングと「ターゲットバリューデザイン」

こうした構造的課題に対し、芝浦工業大学の志手一哉教授は、大手ゼネコンだけの労働環境改善に留まらず、サプライチェーン全体の構造転換が必要であると指摘しています。その具体的なアプローチとして、以下の2点が挙げられます。

1. フロントローディングによる早期合意形成

施工の段階に入ってから図面の不整合や変更が発生するのを防ぐため、設計・計画の初期段階(フロント)に関係者が集まり、BIM(Building Information Modeling)を活用して3次元モデル上で課題を解決しておく手法です。発注者を含めた早い段階での合意形成が、後工程のやり直しを根絶します。

2. ターゲットバリューデザイン(TVD)の導入

発注者から技能労働者までが目標価格(ターゲットコスト)と価値を共有し、予算内に収まるよう設計・施工プロセスを協働で最適化していく手法です。これにより、不適切な安値発注や、後からの予算超過による工期へのしわ寄せを防ぎます。

3. BIMデータと工場加工(プレカット・プレファブ)の連携

将来的には、現場での現物合わせの作業を減らすため、デザイン段階のBIMデータをそのまま工作機械の「加工データ」へ変換する取り組みが有効です。工場で事前にプレカット・プレファブ化された部材を現場へ搬入し、組み立てるだけにする体制(Building OSの構築や施工の工業化)が、施工効率を劇的に向上させます。

建設サプライチェーン全体のデータ連携に向けた3つの提言

BuildApp総合研究所は、本レポートの最終章において、業界全体の働き方改革とDXを成功させるための「3つの提言」をまとめています。

  • 受発注形態および契約の適正化:実態に即した適正な工期設定と、労務コストを反映した適正な取引価格の担保。

  • フロントローディングの標準化:設計段階からサブコンや製造側の知見を入れ込み、現場手戻りをゼロにするプロセスの確立。

  • サプライチェーン全体でのBIM活用とデータ連携:発注者・設計者・施工者・専門工事会社の間で、建材の調達から施工・メンテナンスに至るデータを分断させず、一元管理する仕組み(BuildApp等のプラットフォーム活用)の構築。

単一企業内での部分的なデジタル化ではなく、川上(発注・設計)から川下(専門工事・製造)までをデータで繋ぐ「サプライチェーン改革」こそが、建設業界の持続可能性を確保する唯一の道と言えます。

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